会社員が副業を始めるときの選び方・始め方・続け方を、手順に沿ってまとめています。

Preparation

始める前の準備

副業の労働時間の通算と社会保険の基本

目次
  1. 労働時間の通算とは何か
  2. 通算の管理は誰がするのか
  3. 社会保険の加入はどうなるか
  4. 雇用保険と労災保険の考え方
  5. 業務委託や個人事業の場合
  6. 長時間労働を避けるために
  7. 次にやること

雇用契約を結んで副業をする場合、本業と副業の労働時間は通算して扱われます。社会保険や労災保険、雇用保険の扱いにも、働き方によって違いが出ます。ここでは、会社員が副業を始める前に知っておきたい基本を、一般論として整理します。個別の手続きは、勤務先や年金事務所、労働基準監督署などで確認してください。

労働時間の通算とは何か

労働基準法では、事業場が異なる場合でも、労働時間は通算して計算するとされています。たとえば、本業で1日6時間、副業で1日3時間働けば、その日の労働時間は合計9時間として扱われます。

法定労働時間は、原則として1日8時間、週40時間です。通算した結果、この上限を超えた分は時間外労働となり、割増賃金の支払い対象になります。どちらの会社が割増賃金を支払うのかは、労働契約を結んだ順序や、時間外労働が発生した事業場によって決まります。

この通算の考え方は、雇用契約で働く場合に適用されます。業務委託や個人事業主として働く副業は、労働基準法の労働時間の通算の対象にはなりません。ただし、体を壊さないよう、自己管理は欠かせません。

副業先で雇用契約を結ぶときは、契約を結ぶ前に、本業の会社の許可や届出の要否を確認してください。副業先の求人に応募する段階で、本業の就業規則との整合も確かめておくと、後で困りません。

通算の管理は誰がするのか

厚生労働省は、副業や兼業に関するガイドラインを示しており、労働時間の管理の考え方を整理しています。基本的な流れは、従業員が副業の労働時間を会社に自己申告し、会社がそれをもとに通算して管理するというものです。

そのため、副業を雇用契約で行う場合は、副業先での働く時間を、本業の会社に正しく伝える必要があります。会社によっては、届出書に労働時間を書く欄が設けられています。

ガイドラインには、簡便な管理の方法も示されています。事前に各社で働く時間の上限を決めておき、その範囲内で働くという方法です。細かな運用は会社ごとに異なるため、詳しくは自社の担当者に尋ねてください。

社会保険の加入の判断は、一般論だけでは難しい場面があります。具体的な条件が分からないときは、副業先の担当者に「社会保険の加入対象になるか」と尋ねるのが近道です。曖昧なまま始めず、事前に確認することを心がけてください。

社会保険の加入はどうなるか

社会保険(健康保険と厚生年金)は、働く会社ごとに加入要件が定められています。本業で加入している場合、副業先でも要件を満たせば、重ねて加入することになります。

要件は、労働時間、賃金、勤務の見込み期間、会社の規模などで決まります。短時間の副業であれば、多くの場合は加入の対象外です。ただし、制度は改正が重ねられているため、最新の条件は、日本年金機構のウェブサイトなどで確認してください。

2か所以上で加入する場合は、「二以上事業所勤務届」などの手続きが必要になります。保険料は、それぞれの報酬額をもとに計算され、按分されます。手続きの過程で、本業の会社にも情報が伝わるため、会社への届出と合わせて準備しておきましょう。

副業先を辞めるときの手続きも、念のために確認しておきたい点です。離職票の発行や、保険の資格喪失の手続きが、副業先で行われるかどうかを、契約の時点で聞いておくと安心です。

雇用保険と労災保険の考え方

雇用保険は、原則として、主たる賃金を受ける1つの事業所でのみ加入します。本業で加入していれば、副業先での加入は、通常はありません。なお、一定の条件を満たす65歳以上の人には、複数の事業所の労働時間を合算して加入できる制度があります。

労災保険は、業務中や通勤中のけがや病気を補償する制度です。雇用されて働く場合は、副業先でも労災保険の対象になります。

複数の会社で働く場合、労災の給付額を計算するときには、すべての勤務先の賃金を合算する仕組みが整えられています。また、副業先から本業への移動中などの事故も、条件によっては通勤災害に含まれます。万が一の際は、勤務先や労働基準監督署に相談してください。

業務委託の副業でも、長時間・長期間にわたり、実質的に雇用されているのと変わらない働き方になると、契約の形と実態が異なると判断されることがあります。契約書の内容と、実際の働き方が合っているかを、定期的に見直してください。

業務委託や個人事業の場合

業務委託契約や個人事業主として行う副業は、労働基準法の労働時間の通算の対象とならず、社会保険も、副業先で加入する形にはなりません。この点は、雇用契約とは大きく異なります。

その代わり、労災保険や雇用保険の保護も受けられません。仕事中のけがや病気は、自分で備える必要があります。必要に応じて、民間の保険を検討することも一つの方法です。

個人事業の収入が増えて一定の規模になると、国民健康保険や国民年金の扱いに影響が出る場合があります。会社員で健康保険に加入している間は、通常は変わりませんが、状況によって扱いが異なるので、役所や年金事務所で確認すると確実です。

労働時間の把握には、手帳やアプリで毎日の時間を記録するのが有効です。記録を1か月分見直せば、自分が無理をしやすい曜日や時間帯が見えてきます。記録の習慣は、通算の自己申告にも使えます。

長時間労働を避けるために

通算ルールの有無にかかわらず、本業と副業を合わせた労働時間が長くなりすぎるのは危険です。睡眠不足や疲労が重なると、事故や病気のリスクが高まり、本業の成果にも影響します。

目安として、本業と副業を合わせた週の総労働時間を把握し、自分が無理なく過ごせる範囲を決めておきます。休日の確保や睡眠時間も、副業の計画に織り込んでください。

体調に変化を感じたら、副業の量を減らす、休む、といった判断を早めに行います。会社には、従業員の健康を守る義務があり、相談を受ければ、配慮してもらえる場合があります。無理を続ける前に、周囲に声をかけてください。

制度の内容は、法改正によって変わることがあります。ここで説明したのは執筆時点の一般的な考え方なので、実際に手続きをするときは、厚生労働省や日本年金機構の最新の案内で確認してください。

次にやること

副業が雇用契約か、業務委託かを確認します。雇用契約なら、労働時間の通算が必要になるため、副業先の勤務時間と、本業の勤務時間を一覧にまとめます。

そのうえで、本業の会社に、副業の労働時間の申告方法を確認します。社会保険の加入要件が気になる場合は、副業先の担当者や、年金事務所に問い合わせてください。事前に確認しておけば、始めてから慌てずに済みます。